崩れかけた夫婦の危機を救ったのは、一枚の「心の取説(トリセツ)」でした

生き方の指針

先日、リハビリ仲間のご夫婦から、切実な相談を受けました。

「もう、どうしていいか分からない。離婚も考えている……」

旦那様はもともと、包容力に溢れた安心感の塊のような方。奥様はその魅力に惹かれて結婚されたそうです。

しかし、病気がその幸せを一変させました。

片麻痺に加え、高次脳機能障害による感情の起伏。

かつての「大人の余裕」が消え、奥様に高圧的に当たってしまう旦那様と、助けてあげたいのに予想外の反応に困惑し、疲れ果ててしまった奥様。

私は、自身の離婚経験、そして何より「同じ当事者」としての視点から、お二人の間に入ってじっくりとお話を伺いました。

そこで見えてきたのは、「嫌いになった」のではなく「伝え方が分からなくなった」だけという切ない事実でした。

当事者だからわかる「言い出せない苦手」

私は奥様に、高次脳機能障害を持つ当事者が、心の中で何を感じ、何に苦しんでいるのかを「通訳」としてお伝えしました。

• 喪失感の嵐: 以前できていたことができない。自信が大きく削がれているため、強い口調で言われると、存在を否定されたように感じてしんどくなる。

• スピードの壁: 早口で話されると脳の処理が追いつかず、パニックになってしまう。

• 焦りのフリーズ: 急かされると体が動かなくなり、それが「怒り」として表に出てしまうことがある。

「旦那様が怒っているのは、あなたを嫌いだからではありません。余裕がなくて、自分を守るのに必死なだけなんです」

「ゆっくり、優しく」が魔法になる

私は奥様に、一つだけ提案をしました。

「まずは、今までよりも少しだけ、ゆっくり、優しく話すことだけを試してみてください」

結果は、劇的でした。

数日後、「ギクシャクした感じがだいぶ減りました」と、明るい報告をいただいたのです。

介護には「自分の取説」が必要だ

この経験を通じて強く感じたのは、介護をする側・される側、お互いのために**「自分の取説(取扱説明書)」**を共有しておくことの大切さです。

「私は今、こういう時にパニックになります」

「こういう風に声をかけてくれると、安心します」

私は今、こういう時にパニックになります」

「こういう風に声をかけてくれると、安心します」

そんな風に、お互いの「今の苦手」を整理して伝え合うこと。

病気で性格が変わったように見えても、根底にある「感謝」や「愛」は変わっていません。ただ、それを届けるための「回線」が少し混み合っているだけなのです。

もし今、同じようにギクシャクしているご夫婦がいたら、どうか諦めないでください。

「取説」を書き換えるだけで、また二人で笑い合える日が来るはずですから。

コメント

タイトルとURLをコピーしました